卒業

憧れのお父さん | INDEX
京子一時帰国。
それは、初春のまだ桜の蕾も少し固い頃。

俺たちの番組もなんと3年も続いていて、彼女は特別ゲストで出演してくれた。
彼女が「坊」だったことは、明かされていて、坊の卒業後は同じラブミー部の天宮さんが、「嬢」というヒヨコで登場。明るい外見とは裏腹な毒を吐き散らして人気を得たが、彼女もブレイクしてしまって、卒業。今は「玉子」というキャラになっている。
二代のアシスタントがトップスターになったことで、この着ぐるみには売り込みが殺到した。それを勝ち抜けた、わりと根性座った子だが、歴代の二人がともに昔の着ぐるみでゲスト出演となり、ちょっと気の毒だったような特番。

「京子ちゃん、お疲れさま。出演ありがとう。」
楽屋から丁度出てきた彼女に遭遇。
「光さんこそ、ありがとうございました。久しぶりの坊は楽しかったです。また、よろしくお願いします。」
以前と同じようでいて、とんでもなく綺麗になってしまった彼女に、こちらこそよろしくねとしか言えなかった。

ふうわりと歩いて去っていく彼女の後ろ姿を、俺はぼんやりと見蕩れていた。
そして、、

彼女の前方から現れたのは、不破くん。
「よお。」
「お疲れ様です。」
軽い会釈の彼女。
微笑んだのか、彼の顔は赤くなる。
「帰国したなら、連絡ぐら」
いいかけた彼の横を通り過ぎるかと思ったら、彼女が彼を抱きしめた。
そして驚く彼の耳許に顔を寄せ、何事かささやいて口づけを落とす。
そのあと一歩下がって、彼女は彼から離れ、振り返りもせずに行ってしまった。

呆然とその光景をみていた。

残された不破くんの顔に表情はなく、しばらく立ちすくんでいた。
その後の彼は俯いてしまい、俺もそれ以上みているのは憚られて、静かにその場を去った。


その1ヶ月後。
不破くんの新曲が発売され、俺はあの光景を思い出してしまった。
アコースティックギター1本のそのバラードは、ビジュアル系という装いも捨てたもので、いろいろ物議をかもしだすほど売れた。究極の失恋ソングという評価に、失恋ねぇと彼はため息をつきながら、そういうことでもいいですよとインタビューで答えたらしい。

〜ありがとう、そして、さよなら、僕のおとぎの国
 君の幸せを、僕は祈り続けよう〜


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初出:2013/11/8
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