「春の胸キュン祭・萌え☆フェス」参加作

さくらんぼリップ


・・美味しそうだな。
呟かれた言葉とともに、そっと伸ばされた手が頬を包む。
・・どこが、美味しそうなんですか?
両手が包んだのは頬だったから、まるで御饅頭のようなほっぺただと云われた気がしてムクれて唇を尖らせた。
・・熟れたさくらんぼみたいだ。
尖らせたくちびるをなぞる指に、噛みつこうとして、舌先が、触れてしまった。
その感触に驚いて、口が薄っすら開いて、後ろに逃れようと身体が退こうとしたのに、包み込まれた頬が、残る。

クス

頬を包んだ手を離してはくれずに、彼は顔を寄せる。
・・ゆび、美味しい?
舌が触れたそれは少し、、甘い気がした。
きっとそれは、、ルージュのせい。ほんの少しだけ桜の甘い香りが滲んだ口紅。
・・答えてくれないなら、、味見しようか。
触れたままの長い指がぐっと唇を押して、そして、、
サラっ
彼の髪が流れる音がして
ふわぁ
とても甘い香りがたちのぼると
ちゅぅ
瑞々しい音が、その少し冷たい指から唇を伝った。

クス

少し離れたその顔が悪戯っぽく微笑んだのが、、、
憎たらしいと、思ったのに。
ツキン
直に触れられなかった唇が、寂しいと震えた。

あ、、

するりと両手が頬を撫でて離れてしまう。
声に出すより早く、手が動いた。
頬から彼の手を逃さないように包んで。

・・美味しく、無いですか?
震えてしまった声
勝手に潤んでしまう眼
きゅっと
噛み締めてしまう、唇。
ぎゅっと
包まれた頬。

あ、

熱い吐息
触れた熟れた果実のような感触と、滴る甘い果汁。
これは、桜の、口紅の甘さ?
プツン
歯に当たって弾けたさくらんぼのように、口内に広がる甘い汁。
溢れてしまいそうなそれを、
こくん
喉に流しこんだ。

クス

少し離れたその顔が満足げに微笑んだ。

・・美味しかったよ。


***

「なっ!」
キョーコは真っ赤になって叫びそうになった口を慌てて両手で塞いだ。
「何よ?」
隣に座っていた奏江が怪訝な顔をする。
二人は映画館にいた。
館内の照明は完全に落とされておらず、CMを流していたのだ。
軽快な音楽にのせ「さくらんぼリップ」と新作口紅のコマーシャルが流れた。
発色もさることながら、香りとつけ心地にこだわったというその口紅のアピールが、「指ちゅー」シチュエーション。
「ほんのり甘い~」
マルミーが舌ったらずに微笑むそのCMを、本当に可愛らしいとキョーコは思ったのだったが、そのあとの映画の予告編がいけなかった。

「美味しそうだね。」
隠し通すと決めた恋の相手が、大画面で神々スマイルを放ちながら、そう投げかけたから。
・・・・ど、どうしてその台詞だけでっっ。
キョーコは奏江に謝りながら、紅潮した頬と口から飛び出しそうな心臓を抑えた。

**

「全くね、苦手なモノに全力投球しなくてもいいと思うんだけどさ。」
社が肩を竦める。
「別に苦手とは。」
蓮はロケバスの中、羊枕に頭を乗せて座席に身体を丸めた。映画の撮影中の少し長めの休憩に、少しでも体調を戻そうとする。
「美味しそうだな、、なんてさーキョーコちゃんの料理にしか言えない癖に。」
グフフと社が小さな声で笑う。
そう、蓮の役は料理チェーンの若きオーナー。自分で認めた料理人しか使わなかった彼が、大病を経て再び料理への夢を持つまでというストーリーなのだが、いかんせん食べるシーンが多いのだ。現に今も食べた振りでは済まないシーンの撮影後。こうなることは覚悟していたとはいえ、きついのは否めない。
それでも、この主人公が病のせいで拒食症になり、懸命に支えてくれる彼女が作った料理を見て「美味しそうだな。」というそのクライマックスのシーンが、やけに鮮やかに頭に浮かんでしまって、心配する社を押し切り、蓮はオファーを受けたのだった。
ブブブブ
マナーモードの携帯のバイブレーションが、蓮の思索を打ち切った。社が慌てたように手袋をはめ携帯を取り出す。
にやり
応答前に、ディスプレイに示された名前に社が笑んだ。
「お疲れ様、うん、ロケバスにいるから。」
「そう、わかった?ありがとう。」
にたり
社が携帯を閉じて、蓮に笑みかける。
「キョーコちゃんが差入れ持ってきてくれるって。」
「、、、社さん。」
蓮はジトっと社を睨む。これ以上何か食べるのは無理だし、そもそも、こんな姿を見せたくないのが、、男のプライドというものであろう。
「大丈夫だよ、食べ物は依頼してないからさ、ぐふふ。」

「お疲れ様です!敦賀さん大丈夫ですか?」
息急き切ってバスに飛び込んできたキョーコに蓮は嬉しくなってしまう。
「すこし、、大丈夫とはいえそうにないんだけど。」
苦笑いのようにそれでも、嬉しい気持ちを全面に押し出して蓮はキョーコに語りかけた。
「じゃ、キョーコちゃん、少しの間、蓮の事たのむね。」
社がひょこりと立ち上がり、キョーコと場所を入れ代わり去っていく。
「忙しいだろうに、ごめんね?」
社を見送るキョーコの背中に蓮は声をかける。
「と、とんでもないっ。」
慌てたように振り返ったキョーコは、いつもより大人びているような、ナツともセツとも違う雰囲気で、蓮は改めてたじろいだ。
「美味しそうな・・・・」
うっかりと口から溢れ出た言葉。
吃驚したようなキョーコの見開いた瞳。
「ルージュ、変えたんだね?」
コホン
小さく咳払いして、矛先を微妙にずらした。
「あ、えと、春の新色って、ドラマで共演した子がCMしてて。」
ほわん
頬を染めたキョーコがおずおずと説明する。
「そう、すごく美味しそうな、色、だね。」
ビクン
蓮の言葉にキョーコの身体が震える。
「さ、さくらんぼ、ルージュっていうのでっ、。」
そっと蓮はキョーコの頬に手を伸ばした。
「そうなんだ?さくらんぼ、ぽいかな。」
すうぅと指でそのぷっくりとした唇をなぞる。
あわわわと身体を硬くするキョーコからそっと手を離し、蓮は唇をなぞった自分の指にキスした。
「少し甘いね。」
「甘いってっ。」
「さくらんぼの甘酸っぱい感じがする。」
「は、は、は、破廉恥ですぅぅぅぅ!」
真っ赤になって叫ぶキョーコに蓮は艶然と微笑んだ。
「美味しかったよ?」






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す、スイマセンッ!平謝下ー
胸キュンのキュンがちがうよぅぅぅx
主催者さまがた、期待された方々、ほんとうにごめんなさいー

この後の蓮さんが、肩トンやら床ドンやら脚ちゅーをしても、良いんじゃないか?
とは、思うのです・が。胸キュンだから←逃げ

初出2015/04/02
胸きゅん祭

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