by the way

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anyway・・ところで(まあとにかく、とか、それはそうと、とも)
by the way・・ところで(話変わって、とか、そういえば、とも)
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それはほんとに、些細な一言だった。

「こういうのが好みなの?」

そう尋ねられて、

「彼が好きそうかなと。」

キョーコは何気なく答えてしまっていた。
「え?」
勢い聞き返されてキョーコは、ムガっと自分の口に両手をあてた。
ずらっと並んだスマートフォンのケース。
情報番組のアシスタントとして、それを紹介するために、デザインや質感を手にとって確認していたキョーコである。
黒い革に手の込んだ模様が施されたそれは、大人の男性という重厚感としっくりとなじむ感触が上質な雰囲気で、それを何気なく使う姿が浮かんでしまったのだった。

一緒にいたのは、ブリッジロックの光で、彼はキョーコの手元をみて、小さく呟いた。
「京子ちゃん、彼氏、いるんだ、、、。」
その声が、キョーコに届く。
「ち、違いますっ!!あの、その、いまやってるドラマの、、。」
ワタワタ、あわあわと言い訳するキョーコを、光は少し力なく見つめる。
「ええよ、内緒なんやろ?」
光が少しおどけて小さく言う。

「違います・・・。」
キョーコはしょぼんと項垂れた。

見た訳じゃない。
直接聞いた訳じゃない。
それは、噂だったけれど。

・・敦賀さんには可愛らしい彼女がいるらしい。

「大人な女性」
そんな人が、敦賀さんに似合う人だと思っていた。
でも、、、。
そう、坊に4歳下だと言っていた、高校生だと言っていたのは、、そう、、可愛らしい人。
自分と同じ年の,可愛らしい人。

彼女と同じ年だから、、構って下さってたのかもしれない。

なにか、大人な女性が隣にいるよりも、ニコニコと笑う可愛らしい・・同じ年の人を見る方が、辛い。


「そのケースが似合うなんて、大人だよね。」
光が気を取り直したように、キョーコに言う。
「そうなんです、仕事の出来るスーパーエリートさんなんですよ、だから、好きそうかなって。」
キョーコはドラマで共演する中から、大人を選び出して答える。
「へえっ、番宣もちゃっかりするようになっちゃったか。」
笑って答えた光に、キョーコは安堵しながら笑みを浮かべてみせる。
「ですよ!おかげさまで、成長しましたから。」

***

「そうか、そりゃーリーダーショックやな。」
「でも、ええやん、片想い中なら。」
「片想い中やぞ。。」

・・片想い。
廊下を歩いていた蓮の耳に飛び込んできた、その言葉。

「京子ちゃんの相手って、どれだけ大人なんだろう。」

ギュ
蓮の足が、心臓がとまる。
・・・あの子が誰かに恋している?

「そうやなぁ、急に別嬪になったしな。」

・・・そんなこと。

「やっぱ、恋した相手に影響されるんやな。」

・・・いつの間に、誰に?

「大人なんてなぁ、憧れも強いんとちゃう?」

・・・憧れ。

「でも、スマホのケースだぞ?なんていうか、距離近いだろ?」
「リーダー、、なんか乙女心わかるようになったんやなぁ。」
ははは。
すこし調子はずれな乾いた笑い。
その声が少しづつ、蓮から遠ざかってゆく。

・・・あの子の側に、いる、大人の男。

蓮はまだそこから動けない。
彼女がきらきらしたあの笑顔で、「これ」と差し出したケースをきっと、男は微笑んで「ありがとう」と言って使うんだろう。
それを、あの子は宝物でも見つめるように、、じっと。

ふるっ
蓮は目を固くつぶり首をあげる。
「よかったね。」
・・・そんなふうに、あの子の話を聞けるほど、俺は大人じゃないから。
・・・まだ、片想いなら、、。


by the way(ところで)

ブリッジロックの三人が、
「きっと敦賀さんなんやろうな。」
と会話していたのは、蓮の耳には入ってこなかったらしい。



end



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じれったいよーーーーー!!!!


web拍手 by FC2 初出:2014/9/11
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